歌劇「ウィリアム・テル」序曲 (G. A. ロッシーニ 作曲)吹奏楽編曲
“William Tell” Overture
(Gioachino Antonio Rossini) (Arr. by TETSUKA, Toru)
フルスコア(PDF)はこのページからダウンロードできます。
パート譜一式(PDF)は、メールで編曲者あて申し込んでください。
スイスの伝説の英雄、ウィリアム・テルの物語による歌劇の序曲として作曲されたものです。
当時の司政官ゲスラーが思いついた残酷な刑罰として、息子の頭の上に乗せたリンゴを的にして矢で射ることを命ぜられ、これに成功した場面は特に有名です。
原曲は2管編成の管弦楽(オーケストラ)です。編曲は割と原曲に準拠していますが、編成や時代の違いから若干の工夫をしています。
リンゴにちなんで、2011年10月5日逝去したスティーブ・ジョブズ氏(米アップル社元CEO)へ追悼の意を表します。
データリスト
演奏時間 約11分
調 【原調版】原調 【移調版】全体を半音上げて移調
楽器編成(*は省略可)
- ピッコロ、フルート2
- *オーボエ2、*バスーン2
- *E♭クラリネット、B♭クラリネット3(divあり)、*アルト・クラリネット、バス・クラリネット、*コントラバス・クラリネット
- アルト・サクソフォーン2、テナー・サクソフォーン、バリトン・サクソフォーン
- トランペット3、ホルン4、トロンボーン3、ユーフォニアム、チューバ
- コントラバス
- ティンパニ、パーカッション4(スネアドラム、バスドラム、クラッシュ・シンバル、トライアングル、シロフォン、マリンバ)
日本での標準的な編成を念頭に置いて編曲しています。大編成から中程度の編成まで演奏可能です。
(*は省略可。ソロなどは他の楽器に代理演奏用の小さな音符を加えています。)
フルスコアのダウンロード
吹奏楽編曲フルスコア 歌劇「ウィリアム・テル」序曲 原調版(v6)(PDF、53ページ、約5.1MB)
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管弦楽フルスコア 歌劇「ウィリアム・テル」序曲(IMSLPサイト、英語)
曲の試聴
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(試聴音源の演奏時間:10分55秒)
夜明け | 四分音符=54 | 約2分36秒 |
嵐 | 二分音符=108 | 約2分24秒(計5分00秒) |
牧歌 | 八分音符=76 | 約2分01秒(計7分01秒) |
スイス独立軍の行進 | 四分音符=132 | 約3分54秒(計10分55秒) |
編曲のコメント
夜明け
原調版:ホ短調(♯1) 移調版:ヘ短調(♭4)
3/4拍子 Andante(四分音符=54)
アルプス山間の静かな夜明けを描写しています。
原曲では、五部のチェロ独奏による重奏と、残りのチェロ、コントラバス、ティンパニのみで演奏しています。中低音の弦のみ(同族)であり、この広い音域をカバーできるクラリネット族に全部の音を置き換えるのも一手ですが、静かな夜明けが薄暗いまま終わってしまう気がしますし、チェロ独奏というのはかなり甘く明るい音色がします。そこで、もう少し夜が明けてもよかろうということで、ソロ部分はバス・クラリネット、アルト・サクソフォーン、アルト・クラリネット(*省略可)を中心として、重奏部分を場所によってサクソフォーン、クラリネット、ホルンで使い分けて音色の変化を出しました。残りのチェロとコントラバスは、バスーン(*省略可)、クラリネット族、コントラバス、ユーフォニアムが担当しています。ティンパニは原曲どおりです。
嵐
原調版:ホ短調(♯1) 移調版:ヘ短調(♭4)
2/2拍子 Allegro(二分音符=108)
嵐が近づき、荒れ狂う疾風から、やがてすさまじい雷雨が襲来します。嵐が過ぎて、ティンパニの遠雷と、フルートの雨滴が残ります。
原曲は2管編成のフルオーケストラ。始めは小さくやがて荒れ狂う疾風は、原曲では第二バイオリンとヴィオラですが、クラリネットに始まりサクソフォーンを加えています。ロングトーンと刻みの木管は、できるだけ原曲に近くしています。高音のバイオリンとヴィオラの刻みは、フルートとアルト・サクソフォーンのロングトーンに、トライアングルのトレモロをピアニッシモで追加しています。
雷雨の部分のパーカッションは、原曲にないシンバル、スネアドラム、シロフォンを足しています。また、スネアドラムは弦のトレモロ感を出すためにも使っています。原曲のパーカッションはティンパニとバスドラムのみですので、他を省略すれば原曲どおりの用法になりますが、吹奏楽の響きとしては若干物足りなくなるかと思います。
牧歌
原調版:ト長調(♯1) 移調版:変イ長調(♭4)
3/8拍子 Andante(八分音符=76)
スイスの高原ののどかな牧歌です。
3/4拍子になっていないのは、テンポが思いのほか速いので、四分音符中心でのっぺりする印象を与えないように記譜されたものと思われます。原曲を踏襲して3/8拍子にしました。
ほとんどがイングリッシュホルンの独奏とフルートのオブリガードの絡みで、移調したほかは原曲どおりです。イングリッシュホルンがない場合は、オーボエかアルト・サクソフォーンで代用可能です。
フルートの独奏オブリガードの譜面はすさまじく見えますが、慣れると(短前打音以外は)意外にも思ったほどではありません。六連符の中の短前打音は、テンポが速いので、実際には短前打音の代用として、六連符の最初の休符を次の三十二分音符の全音高い音で音符にしてテヌートで吹くだけでもそのように空耳で聞こえます(参考音源は短前打音が前に飛び出してしまっています)。ただし、演奏が遅めのテンポならば楽譜どおりに吹けると思います。
伴奏は原曲ではバスーン、クラリネット、ホルンの伸ばしと、弦楽合奏のピチカートでの刻みになっており、伸ばしは原曲どおり(バスーンがない場合はサクソフォーンで代用)、刻みはクラリネットと中低音金管(トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ)、コントラバスが担当しています。
スイス独立軍の行進
原調版:ホ長調(♯3) 移調版:ヘ長調(♭1)
2/4拍子 Allegro vivace(四分音符=132)
スイス独立運動に励む志士の行進と、高らかな勝利の讃歌です。
冒頭のトランペットに始まる金管のファンファーレに始まり、原曲では弦楽合奏から木管が加わりフルオーケストラになり、また弦楽合奏からを繰り返した後に全合奏でのコーダで華々しく終わります。
金管は1stトランペット以外は原曲を尊重し(必ずしも原曲どおりではなく若干異なりますが)、弦楽合奏部分はクラリネット、サクソフォーン中心としています。
パーカッションは鍵盤楽器(シロフォン、マリンバ)以外は原曲どおりです。
クラリネットにほとんど休みがなく、結構大変だと思います。ブレス(息継ぎ)するところをメンバー間でうまくずらす(交代してブレスする)などして工夫してください。
315小節目から1st & 2ndクラリネットによるメロディーがあります。原曲では第一バイオリンがスタッカートで奏する部分ですが、弦の余韻のイメージも含めてスラーとスタッカートを適宜につけ、交代で休符をはさみました。
ゲネラルパウゼ(G. P.=全員休み)の直後は、勝利の雄叫びを表しています。ぴったり息を合わせることで感動が大きく伝わります。
吹奏楽コンクール自由曲におすすめの抜粋版は?
全曲で約11分ありますので、課題曲に3分程度の短い曲を選択しても、2分半程度はカットする必要があります。
夜明け、嵐、牧歌、スイス独立軍の行進の4つは一連の流れがあって、それぞれの味わいがあり曲の雰囲気も異なり変化に富みます。いずれも繰り返しに近い部分を含みますので、うまくカットすれば、全体を演奏することも可能となりそうです。 ンンンンn
また、上記の4つから所要時間と演奏効果を考慮して組み合わせれば、不自然なカットがない抜粋版が演奏できます。課題曲が短ければ1つ外して3つを、課題曲が長ければ2つを組み合わせればよいでしょう。調の特性としては、どう組み合わせても問題なさそうです。曲の終わり方からみて、スイス独立軍の行進(終曲)は外せないと思われます。
例えば次のような組み合わせはいかがでしょうか。
夜明け、嵐、スイス独立軍の行進(約8分50秒)
夜明け、牧歌、スイス独立軍の行進(約8分30秒)
嵐、牧歌、スイス独立軍の行進(約8分15秒)
3つの組み合わせは8分台となります。もう少し短くするには、スイス独立軍の行進で、事実上の繰り返し部分をカットすれば、ほどよい長さになるでしょう。
夜明け、スイス独立軍の行進(約6分30秒)
嵐、スイス独立軍の行進(約6分20秒)
牧歌、スイス独立軍の行進(約6分)
2つの組み合わせは6分台となります。
修正履歴
2019(R元).8.12版(v6)
- フルスコアの拍子番号を大きくした。
- 「夜明け」2小節目以降、テナー・サクソフォーンに、バス・クラリネットの高音ソロ代奏用の小音符を加え、バス・クラリネットに当該部分のテナー・サクソフォーン代奏用の小音符を加えた。
- 「夜明け」後半、移調版ではヘ短調(♭4)からヘ長調(♭1)に変更して記譜していたところを、ヘ短調のままで記譜するようにした。
- 316小節目からのクラリネットの旋律ほか、1stと2ndで分担していたところをdiv.で表示した。
2013(H25).8.2版(v5)
- フルスコアの各小節に小節番号を追加した。
- 移調版に加えて、原調版を作成した。
- 【原調版】原調にすることで音域外の音が生じるフレーズを調整した。
2012(H24).5.27版(v3)〜H24.12.3版(v4)
- 練習番号を小節番号で表記するよう変更した。
- 印刷後に整理しやすくするよう、パート譜の各ページのフッタに、楽器名とページを追加した。
- 315小節目からの、1st & 2ndクラリネットによるメロディーのアーティキュレーションを修正した。
- 343小節目、1st & 2ndクラリネットでメロディーを吹いていた者に休符を加え、2ndアルト・サクソフォーンと2ndトランペットに上昇音型を追加した。
- 345〜346小節目の、シロフォンのメロディーにトレモロが欠けていたので追加した。
2011(H23).12.3版(v1)〜2011(H23).12.10版(v2)
- 215小節目、イングリッシュホルンのソロにタイが欠けていたので追加した。
コメント
[…] 歌劇「ウィリアム・テル」序曲 […]
岐阜県多治見市で中学校の吹奏楽部の顧問をしています、塚原ともうします。
ウィリアム・テル序曲
岐阜県多治見市の陶都中学校で吹奏楽部の顧問をしています、塚原です。
先日、シエナのコンサートを生徒たちと聞いたとき、このウィリアムテルが演奏されました。
生徒がぜひやってみたいということで、ネットで探し購入したのですが、特別なアレンジがされており、希望するものではありませんでした。
ぜひ、楽譜をお分けしていただきたいと思います。
これから、地域のためのコンサートが数件あります。ぜひそのオープニングにスイス軍の行進を演奏したいと思っています。移調版をお願いします。
はじめまして。iSaloon「吹奏楽編曲の部屋」管理人です。
当方の編曲作品に関心を持っていただきありがとうございます。
メールアドレスの方へお返事差し上げますのでご確認くださいませ。
おはようございます。
多治見市の塚原です。
早速のお返事ありがとうございます。
メールが届いておりませんが、私の入力ミスかと思われますので、申し訳有りませんが、再度送信をお願いします。
下記にアドレスを付けます。
当方のメール送信設定のところで誤りがあり失礼しました。
よろしくお願いします。