序曲「1812年」

序曲「1812年」作品49(P. I. チャイコフスキー 作曲)吹奏楽編曲
“1812” Festival Overture Op. 49
(Peter Ilyich Tschaikovsky) (Arr. by TETSUKA, Toru)

フルスコア(PDF)はこのページからダウンロードできます。
パート譜一式(PDF)は、メールで編曲者あて申し込んでください。

1812年のナポレオン軍のロシア侵攻と敗走を描写的に描いており、内容の分かりやすさと派手さから人気が高い曲です。
のだめカンタービレのパリ編の映画でも採用されました(原作では別の曲でしたが)。
1882年にモスクワで開催された全ロシア産業芸術博覧会のために作曲され、作曲者にとってはあまり気の進まない仕事だったようです。
「序曲」の部分は大序曲、荘厳序曲あるいは祝典序曲とも訳されています(英語でFestival Overture、フランス語でOuverture Solennelle)。
原曲は管弦楽(オーケストラ)で、終盤にバンダ(金管合奏)、鐘とカノン砲が加わります。編曲は割と原曲に準拠しているため、金管の要求水準が若干高くなっています。

データリスト

演奏時間  約15分

調  原調(ただし、嬰ヘ長調(♯6)は異名同音である変ト長調(♭6)に移調)

楽器編成(*は省略可)

  • ピッコロ、フルート2
  • *オーボエ2、*バスーン2
  • *E♭クラリネット、B♭クラリネット3(divあり)、*アルト・クラリネット、バス・クラリネット、*コントラバス・クラリネット
  • アルト・サクソフォーン2、テナー・サクソフォーン、バリトン・サクソフォーン
  • トランペット3(1stにdivあり)、ホルン4、トロンボーン3、ユーフォニアム、チューバ
  • コントラバス
  • ティンパニ、パーカッション4(スネアドラム、バスドラム、クラッシュ・シンバル、トライアングル、タンバリン、シロフォン、マリンバ、チャイム)、カノン砲(バスドラムか何かで代用のこと)

日本での標準的な編成を念頭に置いて編曲しています。大編成から中程度の編成まで演奏可能です。
(*は省略可。ソロなどは他の楽器に代理演奏用の小さな音符を加えています。)

1stトランペットにdivがあり、実際には4本が必要です(なければ省略するか、2ndが休みのところは1stの下(小さな音符)を吹く)。
カノン砲のパートもあり、打楽器セクションは部分的に6人必要です。カノン砲は2台目のバスドラム(硬めの音)か何かで代用するのが一般的と思われます。
バンダ(金管合奏、358小節目の3拍目から最後まで)を会場に配置する場合は、金管セクションの該当部分の楽譜をそのまま使用します。

フルスコアのダウンロード

吹奏楽編曲フルスコア 序曲「1812年」(v4)(PDF、55ページ、約5.4MB)

パート譜一式(PDF)は、メールで編曲者あて申し込んでください。

管弦楽フルスコア 序曲「1812年」(IMSLPサイト、英語)

曲の試聴

試聴音源を聴く、または右クリックしてダウンロード(MP3音源)
(試聴音源の演奏時間:15分01秒)

Largo四分音符=60約3分20秒
Andante四分音符=80約58秒(計4分18秒)
Allegro giusto四分音符=138約8分12秒(計12分30秒)
Largo四分音符=60約1分06秒(計13分36秒)
Allegro vivace 約1分25秒(累計15分01秒)

島田交響吹奏楽団 様(2016.3.27 第47回定期演奏会)

2016年3月27日(日)、島田交響吹奏楽団様 第47回定期演奏会(焼津市大井川文化会館ミュージコ、13:00開場 13:30開演)において、序曲「1812年」が、第1部クラシック・吹奏楽オリジナルステージで演奏されました(指揮:置塩 孝裕 氏)。冒頭にコントラバスを入れたほか、チャイムのアドリブなど工夫が見られます。

編曲のコメント

プロローグ(冒頭〜95小節目)

変ホ長調(♭3)、3/4拍子、Largo(四分音符=60)
〜 4/4拍子、Andante(四分音符=80)

正教会の聖歌による冒頭のコラールは、原曲では4本のチェロと2本のビオラで演奏されます。
ここではトロンボーンを主役にして、ビオラの低音域をホルンとユーフォニアム、チェロの最低音をチューバに担当させて、中低音の金管六重奏で開始させました。スラー・レガートの記号は、原曲ではスラー・スタッカートですが、金管でその記号にすると音を切り過ぎる恐れがあり、元々の弦楽アンサンブルの響きのイメージを再現しやすいようあえて書き換えました。
木管とのかけ合いになり音が高くなる途中からはフリューゲルホルン(なければトランペット)が加わります。
曲は次第に激しさを増して71小節目で頂点に達し、77小節目からはロシア軍の進軍が始まります。88小節目から、民衆の祈りのようなオクターブの跳躍はアルト・サクソフォーンです(原曲では第一バイオリン)。

ソナタ形式の部分(96〜357小節目)

変ト長調(♭6)、4/4拍子、Allegro giusto(四分音符=138)
〜(原曲では嬰へ長調(♯6)に転調して再度、変ト長調(♭6)へ)
〜 無調表記
〜 変ホ長調(♭3)
〜 3/4拍子

ソナタ形式で書かれた、この曲の中核部分です。
冒頭の第一主題はサクソフォーン四重奏(原曲では弦楽合奏)で始まり、すぐにクラリネットとバスーンが加わり、激しさを増していきます。
やがてナポレオン軍とロシア軍との戦いが始まり、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の断片が聞こえてきます。
局面は一転して、164小節目からのどかなボロジノ民謡の第二主題が2オクターブで奏されます。
187小節目からのチューバは2本以上あれば音が途切れないようブレスをうまくずらしてください。
207小節目からのロシア民謡風の主題は原曲どおりフルートとイングリッシュ・ホルン(オーボエかクラリネットで代用可)です。
第一主題の変奏から再び戦闘が始まりますが、ナポレオン軍はロシアの厳しい冬将軍に苦しめられ、「ラ・マルセイエーズ」は各パートを転調しながら断片的に飛び交い、やがてナポレオン軍は敗走していきます。
257小節目最後から第一主題が再現し、ボロジノ民謡の第二主題、ロシア民謡風の主題へと続きます。
「ラ・マルセイエーズ」の断片がホルンで回想され、カノン砲とともにトランペットによる断片が途切れると、ロシア軍の力強い駆け足へ移り、次第にその速度を緩めて3/4拍子に変わります。
カノン砲は、バスドラム(硬めの音)など何かで代用してください。

フィナーレ(358小節目〜最後(422小節目))

変ホ長調(♭3)、3/4拍子、Largo(四分音符=60)〜 4/4拍子、Allegro vivace

正教会の聖歌による冒頭のテーマが、勝利の喜びを表すように大音量で奏されます。原曲ではバンダ(別動隊の金管合奏、358小節目の3拍目から最後まで)が加わっており派手さを増しています。金管奏者の一部を客席など舞台と別の場所へ配置して演奏するのも一方策でしょう。バンダの楽譜は、金管セクションの該当部分の楽譜をそのまま使用します。
チャイムは、原曲では鐘の音で、具体的な音の指定はなくアドリブに任されています。この楽譜では八分音符や四分音符で音を具体的に表記して和音構成がわかるようにしましたが、楽譜にとらわれずに演奏を工夫してよいかと思います。
最後は勝利を祝う軍隊の行進で、チャイコフスキーらしくフォルテが4つも付されています。ロシア国歌が中低音で奏された後、華々しく終わります。

修正履歴

2019(R元).11.11版(v4)

  • フルスコアの拍子記号を大きくした。
  • 1〜23小節目、ユーフォニアムの音をトロンボーン3に移し、ホルン1の音をユーフォニアムに移した。
  • 26〜36小節目、トランペット1&2を、可能であればフリューゲルホルンとした。
  • 34〜36小節目、アルト・クラリネットを1オクターブ下げた。
  • 72〜74小節目、トロンボーン2に音を追加した。
  • 85〜88小節目、高音の和音カデンツをクラリネットに移した。
  • 120〜131小節目、トロンボーン3、ユーフォニアム、チューバに8分音符の音型を追加した。
  • 138小節目、148小節目、262〜263小節目、リズムの表記を原曲どおりにした。
  • 262〜263小節目、フルート2を1オクターブ下げた。
  • 224〜257小節目、原曲どおり無調表記にした。

2012(H24).12.24版(v1)から2014(H26).1.20版(v3)まで

  • フルスコアでのパーカッションの五線左側の表記を楽器名(省略名)に変更した。
  • 28〜33小節目、バス・クラリネットに1stバスーンの小音符を追加した。
  • 54小節目、2ndアルト・サクソフォーンの音の誤りを修正した。
  • 62小節目、1stフルートの音の誤りを修正した。
  • 142小節目、パーカッション4(シロフォン)の音の誤りを修正した。
  • 211〜215小節目、低音パートに1小節ずれの誤りがあったので修正した。
  • 189〜215小節目、バリトン・サクソフォーンを追加し、チューバに点線のタイを追加した。
  • 334〜335小節目、1stトロンボーンの音の誤りを修正し、3rdトロンボーンの低音をオプションにした。
  • 403小節目、バス・クラリネットの音の誤りを修正した。

コメント

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