展覧会の絵(M. P. ムソルグスキー 作曲)吹奏楽編曲
Pictures at an Exhibition
(Modest Petrovich Mussorgsky) (Arr. by TETSUKA, Toru)
フルスコア(PDF)はこのページからダウンロードできます。
パート譜一式(PDF)は、フォームまたはメールで編曲者あて申し込んでください。
この曲は、ムソルグスキーが、その親友で建築デザイナーであるガルトマンの遺作展覧会を主催したスターソフに献呈したもので、ガルトマンの絵に寄せて作られており、彼を追悼する鎮魂歌(レクイエム)となっています。
この曲はラヴェル編曲の管弦楽版があまりにも有名であり、これをもとにした編曲が好まれやすいのですが、ピアノ原曲にはまた違った独特の趣があります。そこで、ここではピアノ原曲の楽譜をベースに、原曲の粗野で武骨な雰囲気をストレートに表現したいと考え、シンプルな編曲を心がけました。
終曲「キエフの大門」は特に威厳に満ちた讃歌となっています。キエフを首都とするウクライナ共和国には、あの廃炉となったチェルノブイリ原発があります。2011(平成23)年3月11日の東日本大震災による大地震、大津波、そして福島第一原発事故の犠牲になった方々を思い、被災地が復興されることを願ってやみません。

データリスト
演奏時間 約32分(テンポによりかなり前後します)
調 原調(ただし、嬰ト短調(♯5)は、異名同音である変イ短調(♭7)に移調)
楽器編成(*は省略可)
- ピッコロ、フルート2
- *オーボエ2、*バスーン2
- *E♭クラリネット、B♭クラリネット3(divあり)、*アルト・クラリネット、バス・クラリネット、*コントラバス・クラリネット
- アルト・サクソフォーン2(1stは「キエフの大門」でソプラノ持ち替え)、テナー・サクソフォーン、バリトン・サクソフォーン
- トランペット3、ホルン4、トロンボーン3、ユーフォニアム、チューバ(「ビドロ」でdivあり)
- コントラバス(*「ビドロ」でdivあり)
- ティンパニ、パーカッション4(スネアドラム、バスドラム、クラッシュシンバル、サスペンデッドシンバル、ゴング、トライアングル、チャイム、グロッケンシュピール、ビブラフォン、シロフォン、マリンバ)
日本での標準的な編成を念頭に置いて編曲しています。大編成から中程度の編成まで演奏可能です。
(*は省略可。ソロなどは他の楽器に代理演奏用の小さな音符を加えています。)
パーカッションは、最大5人で演奏できるようにしていますが、その弊害で同じ鍵盤楽器が別のパートにまたがっています。十分な人数がいれば楽器ごとに演奏者を整理するとよいでしょう。マリンバは低すぎる音があれば省略してください。
楽譜の練習番号は、単純に小節番号としました。合奏練習で指揮者からの指示の際、ラヴェル編曲管弦楽版の数字による練習番号では、小節番号の指示と混在した場合、奏者に混乱が生じやすいと思われたためです。全曲の通し番号になっています。
ハープの響きも加えたくなる場面がありますが、編成には加えていません。原調の編曲なので、ハープを加える場合は管弦楽版の楽譜(スコア掲載の音符のまま)の流用が可能です。
フルスコアのダウンロード
吹奏楽編曲フルスコア 展覧会の絵(v16)(PDF、121ページ、約10.4MB)
パート譜一式(PDF)は、フォームまたはメールで編曲者あて申し込んでください。
ピアノ譜 展覧会の絵(IMSLPサイト、英語)
リムスキー=コルサコフ版と、その下に、ラム校訂版(英語版、ロシア語版)があります。
曲の試聴
試聴音源を聴く、または右クリックしてダウンロード(MP3音源)
(試聴音源の演奏時間:31分08秒)
「ムソルグスキーのピアノ演奏を、リムスキー=コルサコフが記憶していたもの」のテンポ設定を基調にしました(出典:全音楽譜出版社のポケット・スコア)。
5回のプロムナードと「キエフの大門」はやや速めに感じられるかと思います。「雌鶏(めんどり)の脚の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー)」は本来遅めですが、これだけは例外的に速くしました。所要時間は、試聴音源による目安です。
なお、YouTube動画のFinaleデモ演奏は平成23年5月掲載で、当時の版によるものです。
| 第一プロムナード | 四分音符=104 | 約1分20秒 |
| こびと | 四分音符=120 | 約2分18秒(計3分38秒) |
| 第二プロムナード | 四分音符=104 | 約40秒 |
| 古城 | 付点四分音符=56 | 約3分50秒(計4分30秒) 【累計 8分8秒】 |
| 第三プロムナード | 四分音符=104 | 約24秒 |
| テュイルリーの庭 | 四分音符=144 | 約52秒(計1分16秒) 【累計 9分24秒】 |
| ビドロ | 八分音符=88 | 約3分1秒 【累計 12分25秒】 |
| 第四プロムナード | 四分音符=104 | 約32秒 |
| 卵の殻をつけた雛鳥の踊り | 二分音符=88 | 約1分14秒 |
| サムエル・ゴールデンベルクと シュムイレ | 四分音符=48 | 2分27秒(計4分13秒) 【累計 16分38秒】 |
| 第五プロムナード | 四分音符=104 | 約1分25秒 |
| リモージュの市場 | 四分音符=120 | 約1分31秒 |
| カタコンブ | 四分音符=57 | 約1分48秒(計4分44秒) 【累計 21分22秒】 |
| 死せる言葉を以て死者とともに | 四分音符=104 | 約1分18秒 【累計 22分40秒】 |
| 雌鶏(めんどり)の脚の上に建つ小屋 (バーバ・ヤガー) | 四分音符=120〜72〜120 (試聴音源は156〜72〜156) | 約3分48秒 |
| キエフの大門 | 二分音符=84 | 約4分40秒(計8分28秒) 【累計 31分08秒】 |
編曲のコメント
展覧会の絵は、5つのプロムナード、その変奏ともいえる「死せる言葉を以て死者とともに」のほか、絵の印象を描いたとされる10曲からなります。
全体的に友人ガルトマンへの鎮魂歌(レクイエム)となっています。
ピアノ原曲において途切れずに続けて演奏すること(attacca)が指定されている組み合わせでみると、次のとおりとなります。
- 第一プロムナード、こびと
- 第二プロムナード、古城
- 第三プロムナード、テュイルリーの庭
- ビドロ
- 第四プロムナード、卵の殻をつけた雛鳥の踊り、サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
- 第五プロムナード、リモージュの市場、カタコンブ、死せる言葉を以て死者とともに
- 雌鶏(めんどり)の脚の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー)、キエフの大門
「プロムナード」のうち原曲でも本当に題名がついているものは第一と第五のみで、第二、第三、第四は正確には題名なしですが、便宜上、プロムナードとしています。
絵の印象というのはガルトマンの業績を称える「表」のモチーフですが、ムソルグスキーは彼の死を非常に悲しんだと言われており、「裏」のモチーフとしてはガルトマンに寄り添った心情を描いたもので、前半はガルトマンが亡くなるまでを描写し、第五プロムナードで気持ちを切り替えて、これ以降の後半はガルトマンの死後の世界を描写しているようにも感じられます。
前半の途中、ビドロで肉体的な死、卵の殻をつけた雛鳥の踊りでは魂のさまよい(お花畑)、サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレで精神的な死の宣告を表現しているようにも感じます。
後半、リモージュの市場は大ニュース(ガルトマンの死)と葬儀までの繁忙、カタコンブと「死せる言葉を以て死者とともに」はガルトマンを弔う儀式の様子と安らかに眠れとの願いであり、雌鶏の脚の上に建つ小屋、キエフの大門はガルトマンの死後の霊界のさま(地獄と天国)という感じがします。
以上まあ勝手な解釈ですが、自筆譜の副題に「ヴィクトル・ガルトマンの思い出」とあり、仮題が「ガルトマン」だったという話もあるので、このくらい想像をめぐらせても良しとしましょう。
展覧会の絵が作曲された動機として、ガルトマンへの友情だけでなく、ロシアの民衆への共感と愛情といった思いを強調される向きも少なくありません。そのような精神性もあったかもしれません。
いずれにしても、この曲は3週間程度で書き上げられたとされており、ムソルグスキーに強い情熱、思い入れが溢れていたことは確かだと思われます。
この曲の強勢(フォルテ、ピアノなど)については、若干付け加えた部分もありますが、ほぼ原曲どおりで指示しています。結果として、例えば「卵の殻をつけた雛鳥の踊り」の中間部ではピアニッシシモ(ピアノ3つ)なのに1stフルートは大きめに吹くなど、個々の楽器に実際に要求される音量と強勢記号との間には大きなずれが生じています。
しかし、強勢記号は音量を示す記号ではないので、音楽としてのフォルテ感(聴き手がフォルテとして捉える感じ)、ピアノ感、フォルティッシモ感、ピアニッシモ感といった感じを聴き手に抱かせる吹き方、表現の仕方をぜひ工夫してください。アレンジの厚み(あるいは薄さ)による表現もありますし、聴き手がそう聴こえるのであれば、個々の楽器において実際に音量が大きいか、小さいかというのはあまり気にしなくても良いと思います。
ピアノ原曲は原典版(ラム校訂版)を底本としましたが、自筆譜ファクシミリ版に基づく注釈付きの他の楽譜も参考にしています。
第一プロムナード、こびと
第一プロムナード Promenade
変ロ長調(♭2)、6/4拍子(冒頭しばらくは5/4拍子+6/4拍子)
Allegro giusto, nel modo russico, senza allegrezza, ma poco sostenuto
プロムナードはムソルグスキー自身の投影とも言われており、展覧会を歩く様子、あるいは絵の印象を描いた曲の前振りのような役割を持っています。ピアノ原曲では5つのすべてのプロムナードが、次の曲へ間を置かずに続けて演奏するよう指示されています(attacca)。
速め(アレグロの速さ)、一定の速度で正確に。ロシア風に。快活さや陽気さ(アレグロ本来のニュアンス)は抜きで。やや音を長めに保って。
冒頭は、定番ならばトランペットですが、出だしで緊張しすぎて音を外しやすいのが玉にキズ。ソロ部分だけなら音域は適切ですが、こだまの合奏部分(6小節目)の最高音が若干高めで(実音A♭)、プロなら別としても、あっさりとは吹きにくく気負った感じに聞こえがちです。また、金管合奏で受けるとファンファーレのような華やかさが優先し、作曲者の指定とは裏腹にアレグロ本来のニュアンスどおりになりがちです。
遺作展覧会を巡りはじめる回想シーンの始まりとしては、もっとしっとりくる感じでいきたいところ。この編曲では、冒頭をアルト・サクソフォーンのソロとして四分音符のチャイム(チューブラー・ベル)を加え、こだまは木管合奏中心にグロッケンシュピールを加えました。
途中(17小節目の5拍目から)、この編曲ではピアノ原曲どおりでしっとり感を出しています(ラヴェル編曲ではホルンにファンファーレ音型を吹かせています)。後半は定番の金管合奏ですが(22小節目の2拍前から)、最後の全合奏とでボリューム感の差を出しクリアな響きにするためホルンを休ませています。23小節目の1拍目は原曲どおりマイナーコードです(ラヴェル編曲はメジャーコード)。
こびと Gnomus
変ホ短調(♭6)、3/4拍子(途中で4/4拍子)
Sempre Vivo – Meno Vivo – Sempre Vivo – Poco meno mosso, pesante – Vivo – Poco meno mosso, pesante – Vivo – Meno mosso – Vivo – Meno mosso – Poco a poco accelerando
プロムナードから「こびと」には間を置かずに続けて入ります。プロムナードでの1拍分が、こびと(Vivo部分)の1小節分に当たると思って続けるとよいでしょう。
緩急が激しい曲です。こびと(ノーム)は土の精で、原画はユーモラスな可愛らしいくるみ割り人形だそうですが、曲想はどうもそのような感じがしません。ガルトマンは動脈瘤で急死したそうですが、病魔に襲われて体をこわした様子を描写したような感じがします。実に勝手な解釈ですが。
43小節目からと53小節目からはスフォルツァンドなので強めの演奏になります(ラヴェル編曲ではピアノ(弱く))。
94小節目からの短前打音(2か所とも)は、ピアノ原曲を参考に、充分に溜めて演奏します(試聴音源では2回目の短前打音が残念ながらうまく表現できていません)。
106小節目からは最初の上昇のみ大きくクレッシェンドしてユーフォニアムのトリルが加わります。下降してデクレッシェンドした後は弱いままで控えめに。
121小節目は、ピアノ原曲では11連符で上昇しますが、ここはラヴェル編曲と同じく十六分音符での半音階の上昇としました。122小節目と123小節目のトリルは異名同音ですが、原理的に122小節目が半音トリルで123小節目が全音トリルになります(123小節目でトリルの高い方の音が半音分上がります)。
128小節目の3拍目はピアノ原曲どおり四分音符です(ラヴェル編曲では八分音符)。
第二プロムナード、古城
第二プロムナード (無題 Untitled)
変イ長調(♭4)、5/4拍子+6/4拍子
Moderato commodo assai e con delicatezza
牧歌的な感じの曲調です。
冒頭のソロは、音域も音色も最適なユーフォニアムを指定しました(ホルンによる代理演奏も可能)。
後半、ユーフォニアム、チューバとコントラバスの下降音型は鐘の音を模していると感じたので、チャイムを重ねています。続いて最後の上昇音型はフルートとグロッケンシュピールです。
古城 Il vecchio castello
変イ短調(♭7、原調は嬰ト短調♯5)、6/8拍子
Andantino molto cantabile e con dolore
吟遊詩人が歌うのどかな情景を表現した、古風なシチリアーナの舞曲です。テンポ一定で脈拍は安定したまま、静かな様子が続きます。病魔に襲われて体をこわしたガルトマンが、救急病棟で集中治療を受けている様子という感じを受けます。
最初と最後のソロにはトランペット(可能であればフリューゲルホルン)を指定しました。ピアニッシモで伴奏も薄いので、軽やかに吹けば良いかと思います。アルト・サクソフォーンが後追いしてソロで吹きます(互いに代理演奏も可能)。
通奏低音のA♭は、弦の響きが最良と思いコントラバスに任せることにしました。楽譜は一見単調ですが、コントラバスがなければこの編曲は成り立たないといえる重要なパートになっています。(無い場合は他の楽器で代用せざるを得ませんが、代奏用の小音符は書き込んでいません。実音はコントラバスの譜面よりオクターブ下です。)
ピアノ原曲ベースなので、出だしはバスーンが曲頭から吹きます。また、小節番号164の前はラヴェル編曲よりも1小節短くなります。曲の最後のアルト・サクソフォーンはオクターブで重ね、1小節(付点二分音符)で吹き終わり、コントラバスの響きが最後まで余韻を残します。
第三プロムナード、テュイルリーの庭
第三プロムナード (無題 Untitled)
変ハ長調(♭7、原調はロ長調♯5)、5/4拍子+6/4拍子
Moderato non tanto, pesantemente
明るく持ち直したような感じの曲調です。
出だしはトランペットとトロンボーンとでオクターブ違いのユニゾンです。
テュイルリーの庭への接続のため、最後(バスーンとマリンバ)の強勢はピアノです。
テュイルリーの庭 Tuileries (Dispute d’ enfants après jeux)
変ハ長調(♭7、原調はロ長調♯5)、4/4拍子
Alegretto non troppo, capriccioso
軽快で可愛らしい感じの曲です。意識もうろうとしたままお花畑をさまよう感じでしょうか。
木管アンサンブル基調で、金管は休みとしました。
中間部の小節番号274はサクソフォーン・アンサンブルで、グロッケンシュピールで飾り付けました。282小節目の2拍目は四分音符で伸ばします(ラヴェル編曲は八分音符で切っている)。
ビドロ
ビドロ Bydlo
変イ短調(♭7、原調は嬰ト短調♯5)、2/4拍子
Sempre moderato, pesante
力強いビートを感じる曲。防ぎようのないとてつもなく大きなものが幾重にも迫ってくる印象です。後半は徐々に鼓動(脈拍)が弱まり最後にはついに途切れて肉体的な死を迎えるといった感じが現れているように感じます。まあ勝手な解釈ですが。
ピアノ原曲の曲想どおり冒頭から中低音金管によるフォルティッシモでいきます。メロディはホルンとトロンボーンがユニゾンで力強く吹きこなします。低音はチューバとコントラバスのdivと、ユーフォニアムと3rdトロンボーン。これにティンパニとバスドラムが加わります。コントラバスが1名のときは低音側を弾いてください。
311小節目からのメロディはトランペットと高音木管が交互に呼応して吹きます。
全員合奏のあと最初の中低音金管が再び演奏され、だんだん音が小さくなっていきます。351小節目のホルンは1拍目から吹きます(ラヴェル編曲ではバス・クラリネットが2拍目に吹く)。最後の小節はピアノ原曲ではテヌートなのでコントラバスのソロでアルコとしました(ラヴェル編曲ではピチカート。ピアノが減衰音なのは承知していますが、命が尽きる最後のともしびを「点」でなく細い「線」で表現したい)。
第四プロムナード、卵の殻をつけた雛鳥の踊り、サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
第四プロムナード (無題 Untitled)
ニ短調(♭1)、5/4拍子+6/4拍子ほか
Tranquillo
初めての短調のプロムナードです。ビドロを受けてか、何か不安をあおるような不気味な雰囲気がたちこめ、可愛らしい次の曲へ接続します。ラヴェル編曲同様に冒頭メロディの後半をオクターブ上げない編曲が多いですが、ここではピアノ原曲どおりにオクターブ上げ、ピッコロにメロディを任せました。
卵の殻をつけた雛鳥の踊り Ballet des poussins dans leurs coques
ヘ長調(♭1)、2/4拍子
Scherzino. Vivo leggiero
可愛らしいスケルツォ。「おらは死んじまっただぁ」と魂だけがさまよっているお花畑な感じです。
全体的にpp(ピアニッシモ)、途中はppp(ピアニッシシモ、ピアノ×3)と大変静かな曲で、木管アンサンブル中心としました。(ラヴェル編曲では繰り返し時にぜんまい仕掛けのおもちゃのようなリズミカルな音が加わっています。雛鳥が多過ぎ?まあ複数形ではあるのですが。)
ピアノ原曲の左手は冒頭2小節目の2拍目が拍頭、4小節目が裏拍で変化しており、これは2ndクラリネットの役割です。
トリオのトリルは最高音(1stフルート)のみです(ラヴェル編曲では下の音にもトリル)。また、中間部はppp(ピアニッシシモ)で、ほんわかしたお花畑の感じをイメージして伴奏も控えめにしています。
コーダ部分はピアノ原曲の長さのとおり。
サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ Duex juifs l’un riche et l’autre pauvre
変ロ短調(♭5)、4/4拍子
Andante Grave-energico – Andantino – Andante Grave
金持ちと貧乏の2人のユダヤ人の会話とされる曲。
途中細かい刻みのメロディは貧乏なユダヤ人。クラリネットとシロフォンのちょっと不安げな音色がぴったりです。Andante Graveに入っての4拍目の刻みは全音下がります(ラヴェル編曲では半音)。
最後は神の裁きかお告げのような感じの「ドレシシー」で、最後の音を3拍きちっと伸ばしてパイプオルガンのような響きを作ります(ラヴェル編曲は「ドレドシ。」と終わり、最後の音は八分音符で切っている)。
第五プロムナード、リモージュの市場、カタコンブ、死せる言葉を以て死者とともに
第五プロムナード Promenade
変ロ長調(♭2)、5/4拍子+6/4拍子
Allegro giusto, nel modo russico, poco sostenuto
気を取り直して、改めてのプロムナードです(ラヴェル編曲では曲全体が省略されています)。出だしはトランペットとユーフォニアムのオクターブ違いユニゾンにチャイムを加えています。
第一プロムナードに近い曲ですが、低音の進行が変化に富んでいるのが一つの魅力です。
最後は1stトランペットとチャイムの伸ばしで、リモージュの市場へつながります。
リモージュの市場 Limoges. Le marché
変ホ長調(♭3)、4/4拍子
Allegretto vivo, sempre scherzando
大ニュースです。ガルトマンが亡くなったんですって。そんな情報がかけめぐって、葬式の準備やらで大わらわの様子です、というのは勝手な解釈ですが、そんな感じの曲です(「大ニュース」は副題でもあります)。
ペチャクチャおしゃべりするような速めの曲です。木管合奏主体で金管を若干かぶせています。
最後は勢い込んで次のカタコンブへつなげます。
カタコンブ Catacombae
ロ短調(♯2、原調は調号なし)、3/4拍子
Largo
カタコンブ(ローマの地下の墓所)を友人と訪れたガルトマンを、葬られた骸骨の山が見つめている絵だそうです。直前のリモージュの市場とはうって変わって、旋律らしい旋律もほとんどなく長く伸ばした音の和音だけでほとんどできている、重々しいゆっくりとした葬送曲です。葬儀の風景でしょうか。
ピアノ原曲は調号なし(臨時記号なし)で書かれていますが、実質的には次の「死せる言葉を以て死者とともに」と同じロ短調の調性を持っています(ラヴェル編曲も♯2で書かれている)。無二の友を失った虚脱感が曲中を貫き、次の曲の前半へも続く感じです。
金管のみの演奏です。フォルテはトロンボーン、ピアノな余韻はホルンを中心に位置づけました。トロンボーンのフォルテは効かせてほしいところ。虚脱感を表現するため、かなり薄めのアレンジです。あまり厚くしたりバスドラムやシンバルを重ねたりすると充実感が満ちてしまうので避けました。
最後の音はチャイムのF♯を鳴りっぱなしで止めず(let ring)、その余韻で、追悼の念を表する次の曲へつなぎます。
死せる言葉を以て死者とともに Cum mortuis in lingua mortua
ロ短調(♯2)、6/4拍子
Andante non troppo, con lamento
カタコンブを受けて、ピアニッシモですすり泣くような物悲しいトレモロとプロムナードの変奏、そして安らかに眠れと祈る落ち着いた曲調へ進みます。
木管アンサンブル、木管合奏です。高音のトレモロはマリンバに任せました。
落ち着いたところのトレモロはビブラフォンに譲り、ハープのような上昇音型はマリンバ、コントラバス、*バスーン、バス・クラリネット、*コントラバス・クラリネットの演奏です(*オプション)。上昇音型はハープを重ねるかハープのみで演奏しても良いところです。原調なのでオケ版(ポケットスコア等)の楽譜をそのまま流用可能です。
チャイムの溶け込むようなF♯も印象的です。
雌鶏(めんどり)の脚の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー)、キエフの大門
雌鶏(めんどり)の脚の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー) La cabane sur des pattes de poule (Baba-Jaga)
イ短調(♯♭なし)、2/4拍子 – 4/4拍子 – 2/4拍子
Allegro con brio, feroce – Andante mosso – Allegro molto
魔女の住む小屋をモチーフにした置き時計の絵がもとになっています。バーバ・ヤガーの綴りはラム校訂版(ロシア語版)の表記によりました(英語圏では「Baba-Yaga」)。
前半と後半はインテンポなリズムに乗っており、ロールプレイングゲームで敵を倒しながら先へ進むような感じ、中間部は地獄のマグマがたぎっているような不気味な感じの曲です。次の「キエフの大門」が天国とすれば、この曲は地獄を表現しているように感じます。
ムソルグスキーの演奏では四分音符=120で、置き時計の機械仕掛けがモチーフなのを感じさせます。ただし、とても遅く感じられるかと思います。よく聴かれる演奏のほとんどはかなり速いテンポなので、時計の感じは失われますがスピード感が出て魔女の不気味さを際立たせます。楽譜の指定はAllegroでもありますし、速い演奏のほうが好まれやすいと思います。
前半の短前打音付き下降音型(615小節目から)は3小節分ですが、後半の下降音型(727小節目から)はピアノ原曲どおり2小節分にしています(ラヴェル編曲はいずれも3小節分)。中間部(685小節目から)に入る直前のトランペットは2小節、4拍です(ラヴェル編曲はこの直後にミュート付きトランペットが2小節、4拍加わっている)。
最後は木管中心の上昇音型から勢い込んで、キエフの大門のテーマを呼び込みます。
キエフの大門 La grande porte de Kiev
変ホ長調(♭3)、2/2拍子 – 4/4拍子
Allegro alla breve. Mestoso. Con grandezza
清らかな、魂が洗われるようなテーマで始まり,力強い讃歌で幕を閉じます。「alla breve」の指示に従い、2/2拍子に整理しました。
出だしのフォルテはやはり金管が美しい。トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム,チューバのみでクリアな響きにしました(ホルンは途中で追加)。1stトランペットは高いところがあります(実音B♭)が、難しければ無理せずソプラノ・サクソフォーン、オーボエなどにフォローさせることができます。ティンパニの短前打音はピアノ演奏のように溜めて演奏し、金管はティンパニをよく聴いて合わせるとよいでしょう。全員合奏(823小節目)の低音楽器の短前打音も同様です。
続いての静かな四声コラール(831小節目から)はクラリネットとバスーン。848小節目からで出だしと同じメロディをトロンボーン、チューバが吹き、メロディが繰り返されて次の四声コラール(865小節目から)は、ピアノ原曲ではフォルティッシモなので、トランペットとトロンボーンが高らかに奏でます(1stトランペットがかなり高めなので、難しければ金管の四声コラール全体をサクソフォーンで置き換えることも可能です)。
鐘の音(882小節目から)に続いて現れるプロムナードのメロディー(898小節目から)は、高音木管とサクソフォーン主体としています。ビブラフォンは難易度が高いので、難しければ890小節目から907小節目までを拍の頭のみで(四分音符にして)演奏してください。
915小節目からは、ピアノ原曲のリズムをそのまま再現しました。(v15から原曲どおり2/2拍子としました。ほとんどが三連符で前へ進む感じを強めているところです。)ラヴェル編曲は管・打が2/2拍子、弦が3/2拍子になっています。3つ振りか、2つ振りか、1つ振りかは指揮者の解釈で。(957-958小節目、960-961小節目は3つ振り、959・962小節目は2つ振りが適当かもしれません。)
963小節目から、最終のフォルティッシモのテーマでは壮大さを増す演出として、ラヴェル編曲と同様、3拍目にゴングとチャイム、バスドラムを加えました。ティンパニ、低音楽器と金管楽器に短前打音が何か所かありますが、ピアノ演奏のように溜めて演奏すると極めて効果的です(試聴音源ではうまく演奏できていません)。最後から2つ目の音はピアノ原曲のとおりE♭のユニゾン、最後の音も中低音のE♭ユニゾンを3拍伸ばして厳粛に終わります。
吹奏楽コンクール自由曲におすすめの抜粋版は?
上記の8つから所要時間と演奏効果を考慮して組み合わせれば、不自然なカットがない抜粋版が演奏できます。たとえば次のような組み合わせはいかがでしょうか。
第一プロムナード、こびと、テュイルリーの庭、ビドロ
約7分30秒。
第一プロムナードのアルト・サクソフォーンで始まり、こびとで多様な組み合わせ,テュイルリーの庭で木管合奏を聴かせ、ビドロで中低音金管、全合奏のフォルティッシモから最後は深く静かに終わります。
ビドロ、第四プロムナード、卵の殻をつけた雛鳥の踊り、サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
約7分10秒。
ビドロの中低音金管から盛り上がっていったん静まり、第四プロムナード、卵の殻をつけた雛鳥の踊りで木管アンサンブルを聴かせ、さまよえる精神を表現します。サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレは死を宣告するオルガンの響きのような3拍のフォルティッシモで幕を閉じます。
第五プロムナード、リモージュの広場、カタコンブ、死せる言葉を以て死者とともに
約6分10秒。課題曲が長めの場合に。
プロムナード、リモージュの広場の賑わいから、カタコンブで虚脱感へ転じ、最後は静かに哀悼の念を表して終わります。曲想はコンクール向きと言い難いですが、カタコンブ以降は「展覧会の絵」で最も重々しく深い部分で、実はここが曲全体の肝ではないかとも思われます。
第五プロムナード(または第一)、雌鶏の脚の上に建つ小屋(後半部分)、キエフの大門
約7分10秒。割と定番に近い組み合わせ。
プロムナードは、いわば第二幕の序章となる第五プロムナードを選択するか、あるいは素直に第一プロムナードとします。キエフの大門は定番です。キエフの大門の冒頭のテーマをより生かすため、雌鶏の脚の上に建つ小屋の後半部分(713小節目から。時間が許せばカットなしでも)を加えるのが効果的です。
死せる言葉を以て死者とともに、雌鶏の脚の上に建つ小屋(前半抜粋〜後半抜粋)、キエフの大門
約7分10秒。
プロムナードの旋律を物悲しくした「死せる言葉を以て死者とともに」で哀悼の念を表します。雌鶏の脚の上に建つ小屋へつなぎ、665小節目から776小節目までをカットして(ノーカットの抜粋版にはなりませんが 😛 時間が許せばカットなしでも)、定番のキエフの大門を高らかに演奏します。
修正履歴
R3.?.?版(v17)予定は未定…(改訂中)
- フルスコアの拍子記号を大きくして、音符も少し大きくした。
- 全体的に、パーカッションの記譜方法を変更した。
- 「第一プロムナード」冒頭、1stアルト・サクソフォーンのソロを、1stトランペットに変更できるよう小音符を加えた(トランペットソロの場合はチャイムは休み)。
- 「第一プロムナード」でピアノ譜にないテヌート記号などの多くを外した。
- 「第一プロムナード」でバスクラリネットの音を原則として低い方に揃えた。
- 「こびと」78小節目、4拍目の音を全部、半音下げて、2拍目の音と同じにした。
- 「こびと」105小節目、3拍目の音にアクセントをつけた。
- 「第三プロムナード」260小節目、バスーン代理の小音符を1stアルト・サクソフォーンにした。
- 「ビドロ」のコントラバスをdiv.で表記した(1人の場合は低い方を演奏してください)。
- 「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」473小節目、バスドラムのクレッシェンド記号にmolto cresc.を書き加えた。
- 「死せる言葉を以て死者とともに」581小節目から584小節目、トランペットとトロンボーンをcon sordino(ミュート付き)で追加した。
- 「キエフの大門」908小節目から914小節目、3rdホルンの音を変更した。
- 「キエフの大門」974小節目から975小節目、ChimeとGongが鳴らしっぱなしの表記であったのを、他の管楽器等と同様に3拍目までで止めるよう明記した。
H30.11.29版(v16)
- 「第一プロムナード」10小節目、13小節目のスタッカートを削除した。
- 「古城」で1stトランペットSoloを、フリューゲルホルン(可能であれば)の指定に変更した。
- 「古城」で1stアルト・サクソフォーンSoloのスラーを若干変更した。
- 「古城」でコントラバス・クラリネットにフェルマータの記載漏れが数か所あったのを修正した。
- 「第五プロムナード」484小節目、487小節目のスタッカートを削除した。
H26.9.15版(v15)
- 「第一プロムナード」でテヌート記号などの位置がおかしくなっているものを調整した。
- 「卵の殻をつけた雛鳥の踊り」403小節目からグロッケンシュピールを、411小節目から2ndフルートを加えた(装飾音符と同じ音を若干強調した)。
- 「キエフの大門」915小節目から962小節目まで、3/2拍子での記譜に整理していたものを、2/2拍子と二分音符の三連符の表記(ピアノ原曲どおり)に変更した。
H25.9.25版(v14)
- 「リモージュの市場」506小節目および531小節目、2nd & 3rdクラリネット、バスーン、アルト・クラリネット、テナー・サクソフォン、ホルンの音の誤り(3、4拍目)を修正した。
H25.8.10版(v13)
- スコアを詰め気味にしてページ数などを調整した。
- オーボエの高音をオクターブ下げるなどして調整した。
- その他、パートによって若干の微調整あり。
H24.12.9版(v12)
- バス・クラリネットのロング管(低音域で実音D♭より下(B♭まで)が出せる場合)用の音符を、括弧書きで全体的に加えた。ロング管があり2人以上いる場合は上下にdiv.するとよい。
- 「キエフの大門」894小節目から911小節目まで、バス・クラリネットの音の誤りを修正した。
- 「キエフの大門」908小節目から911小節目まで、コントラバス・クラリネットの音を1オクターブ下げ、テナー・サクソフォーンとバリトン・サクソフォーンを加えた。
H23.11.6版 (v8) からH24.11.3版(v11)まで
- 練習番号を小節番号で表記するよう変更し、併せてフルスコアの各小節に小節番号をを追加した。
- 印刷後に整理しやすくするよう、パート譜の各ページのフッタに、楽器名とページを追加した。
- 「第一プロムナード」9小節目の冒頭、1stアルト・サクソフォーンにtuttiの表記を加えた。
- 「第一プロムナード」14小節目から、1stクラリネットにOb.1の小音符を加えた。
- 「第一プロムナード」20小節目、2nd & 3rdトランペットと同トロンボーンに1stの小音符を加えた。
- 「第一プロムナード」22小節目の冒頭、3rdトランペットの音を実音B♭に変更した。
- 「ビドロ」347小節目から、1stホルンのgestopftを、Muteでも可とした。ただし、ミュート使用の場合は装着の時間を確保するため、341小節目あたりから休む必要がある。
- 「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」最後(473小節目)バスドラムにSoloを表記した。
- 「カタコンブ」の終わりに「attacca」を表記した。
- 「死せる言葉を以て死者とともに」581小節目のマリンバの1拍目にF♯四分音符を加えた。
- 「雌鶏の脚の上に建つ小屋」694小節目で、コントラバスの音の誤りを修正した。
- 「キエフの大門」890小節目から、ビブラフォンの和音3音を2音に減らした。
- 題名表記について再考した。(参考:“展覧会の絵”研究会。私の慣れ親しんだ語感などもあるので必ずしも踏襲したわけではないが。)
H23.5.6版 (v1) からH23.10.10版 (v7) まで
- フルスコアの最上部、曲名、拍子記号、発想記号、練習番号等を大きく表示するようにした。
- コントラバス・クラリネット(オプション)のパートを加えた。
- 「ビドロ」ティンパニのE(♮)音を、F♭の表記とした(音の変化が判別しやすくなるため)。
- 「ビドロ」318小節目、3rdトランペットの音の誤りを修正した。
- 「ビドロ」347小節目から、ホルンソロに併せてチャイムを2か所追加した。
- 「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」の最後にピッコロとフルートを加えた(パイプオルガンの響きらしさを出したい、また、これでほぼ全員合奏になるため)。
- 「プロムナード(5)」冒頭、2nd & 3rdトランペットを休みにした。
- 「プロムナード(5)」最後近く(497小節目)、2ndホルンの音の誤りを修正した。
- 「リモージュの市場」503小節目の3拍目裏と、526小節目の3拍目裏に、トライアングルを追加した(サスペンデッド・シンバルでは違和感が拭えなかったので変更した)。
- 「雌鶏の脚の上に建つ小屋」712小節目、バス・クラリネットのトリルをやめ、アルト・クラリネット(ない場合はバリトン・サクソフォーン)と重奏するよう変更した。
- 「キエフの大門」冒頭の拍子を2/2にした。

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