バレエ音楽「四季」より 秋(A. グラズノフ 作曲)吹奏楽編曲
L’ AUTOMNE, Quatrième Tableau du Ballet “LES SAISONS” Op.67b
(Alexandre Glazounow) (Arr. by TETSUKA, Toru)

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バレエ音楽「四季」は、クラシックバレエの付随音楽として書かれ1900年に初演された1幕4場の曲で、ロシアの四季折々を絵画のように風景描写していきます。冬から始まり、春、夏と続き、最後に秋が登場します。
第4場:秋は2拍子のバッカナール(酒神祭の踊り)に始まり、回想シーン(冬、春、バッカナールを挟んで夏)に移った後、プチ・アダージョのゆったりとした間奏曲を経て、サテュロス(森の精霊)の変奏曲を挟み、終曲として再びバッカナール(8分の6拍子)から、アポテオーズで星が輝く夜空を表現して、華々しく終わります。
データリスト
演奏時間 約10分(テンポによりかなり前後します)
調 原調
楽器編成(*は省略可)
- ピッコロ、フルート2
- *オーボエ2(イングリッシュホルン持ち替えあり)、*バスーン2
- *E♭クラリネット、B♭クラリネット3(divあり)、*アルト・クラリネット、バス・クラリネット
- アルト・サクソフォーン2、テナー・サクソフォーン、バリトン・サクソフォーン
- トランペット2、フリューゲルホルン2、ホルン4、トロンボーン3、ユーフォニアム(divあり)、チューバ
- コントラバス
- ティンパニ、パーカッション6(トライアングル、タンバリン、スネアドラム、クラッシュ・シンバル、サスペンデッド・シンバル、バスドラム、グロッケンシュピール、ビブラフォン)
- ピアノ
大編成から中程度の編成まで演奏可能です。
(*は省略可。ソロなどは他の楽器に代理演奏用の小さな音符を加えています。)
パーカッションはティンパニを含めて最大7人が必要となります(フィナーレの最後の方)。人数が少ない場合は、トライアングルやタンバリンを管楽器奏者に演奏させるなど工夫する必要があります。
グロッケンシュピールは、最高音が非常に高いので、オクターブ下も記譜しました。括弧内の高い音が演奏可能な楽器の場合はそちらを演奏してください。
原曲にあるチェレスタは、グロッケンシュピールとビブラフォンで代用しています。
原曲にあるハープを代用しているピアノは必須と思われます(省略も可能ですが物足りなくなります。)。ピアノには原曲のハープにはなく加えたところがあります。
曲の試聴
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(試聴音源の演奏時間:10分14秒)
Bacchanal(バッカナール) | 二分音符=108 | 約57秒 |
Entrées des saisons(四季の移ろい)L’ hiver(冬<霰>) | 二分音符=84 | 約42秒(計1分39秒) |
Le printemps(春<微⾵>) | 四分音符=112 〜 四分音符=144 〜 二分音符=108 | 約1分13秒(計2分52秒) |
L’ été(夏<⽮⾞菊とケシ>) | 二分音符=84 〜 四分音符=84 | 約1分08秒(計4分00秒) |
Petit Adagio(プチ・アダージョ) | 四分音符=63 | 約3分05秒(計7分05秒) |
Variation (Le satyre)(変奏(サテュロス)) | 四分音符=116 | 約58秒(計8分03秒) |
Finale(フィナーレ) | 付点四分音符=112 〜 二分音符=72 〜 付点四分音符=120 | 約2分11秒(計10分14秒) |
フルスコアのダウンロード
吹奏楽編曲フルスコア バレエ音楽「四季」より 秋(v2)(PDF、51ページ、約2.5MB)

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管弦楽フルスコア バレエ音楽「四季」(IMSLPサイト、英語)
「「四季」より秋」のみのものは、L’automne, quatrième tableau, Op.67b です。
編曲のコメント
Bacchanal(バッカナール)
ヘ長調(♭1)、2/4拍子 Presto(二分音符=108)
秋は2拍子のバッカナール(酒神祭の踊り)に始まります。陽気でにぎやかな感謝祭です。
ヴィヴァルディの「四季」より秋 第1楽章とも似たような雰囲気がします。
Entrées des saisons(四季の移ろい)L’ hiver(冬<霰>)
ニ短調(♭1)、2/4拍子 Poco meno mosso(二分音符=84)
四季の移ろいを冬、春、夏とそれぞれを短く、回想シーンの感じで巡っていきます。
冬は霰(あられ)が舞い、木枯らしも吹く寒々とした季節です。
オーボエの二重奏で八分音符の伴奏が延々と続きます。原曲ではバイオリンがコル・レーニョ奏法(col legno、弓の木の部分で弦を軽くはずませる)で重なっています。マリンバを小さく重ねるといった手法もあるとは思いますが、スネアドラムのリズムが一緒に鳴るので、オーボエのみで良いかなと思いました。オーボエがない場合はクラリネットで代奏できます。
木枯らしの大きな流れを感じさせるゆったりした旋律(クラリネット、サクソフォーン)の上に、木の葉が舞い散る小さな気流のオブリガードがソロで入ります(フルート、クラリネット)。
Le printemps(春<微⾵>)
変ロ長調(♭2)、2/4拍子 Ancora più lento(四分音符=112)
〜 poco più mosso scherzando(四分音符=144)
そよ風(サクソフォーンほか)に乗って、クラリネットソロに始まるのどかな旋律で始まります。
少し速くなってからはおどけて弾けた感じになります。
思い出したように、秋のバッカナールが挟まって、次の夏の回想へと進みます。
L’ été(夏<⽮⾞菊とケシ>)
ニ長調(♯2)、2/4拍子 Poco meno mosso(二分音符=84)
〜 meno mosso(四分音符=84)
夏といってもロシアは高緯度なので暑苦しいということもなく、快活な印象です。
夏の終わりはゆったりと倍テンポになります。ホルンのロングトーンが地味に難しそうです。301小節目の前、ブレスをとるところは、テナー・サクソフォンとフリューゲルホルンの伸ばしでつないでいます(原曲ではチェロ)。
最後はサクソフォンのアンサンブルです。
Petit Adagio(プチ・アダージョ)
イ長調(♯3)、4/4拍子 Andante mosso(四分音符=63)
秋の静けさと落ち着きが感じられます。ピアノ(原曲はハープ)のアルペジオが美しい。
イングリッシュホルンとアルト・サクソフォーンで始まる旋律がとても表情豊かです。ホルンで始まるオブリガードも素敵です。
クラリネットのソロからフルートのソロへ引き継がれる静かなところを経て、やや盛り上がります。
またオーボエのソロで静かになり、クラリネットへ引き継がれ、静かな中に躍動感を垣間見せながら終わります。
Variation (Le satyre)(変奏(サテュロス))
イ短調(調号なし)、2/4拍子 Allegro(四分音符=116)
先の曲とはうって変わって短調の力強いフォルテで始まり、フォルテッシモで終わります。サテュロスは森の精霊ですが、決して大人しくはなく、自然の力が猛威を振るう感じ、秋の嵐が吹きすさぶ感じがします。
不安げな揺れ動きがフレーズの最後に強まったり、極端な強弱の対比があったりと、変化に富む表情豊かな曲です。
Finale(フィナーレ)
ヘ長調(♭1)、6/8拍子 Allegro(付点四分音符=112)
〜 più mosso scherzando(付点四分音符=144)
〜 2/2拍子 Moderato(二分音符=72)
〜 6/8拍子 Allegro(付点四分音符=120)
バッカナールが6/8拍子になって再登場です。少し速くなってスケルツァンドでフルートのソロがおどけた感じを出しています。盛り上がったところで、嵐が通り過ぎ、アポテオーズ(「最高の賞賛」を意味する、バレエのフィナーレ)で星が輝く夜空を表現して、最後に華々しく終わります。
原曲にあるチェレスタは、グロッケンシュピールとビブラフォンで代用しています。最後にパーカッション全員が動員されるため、チェレスタ代用の楽器から他の楽器へ移る余裕がなく、パーカッションが最大7人必要となります。
人数が少ない場合は、トライアングルやタンバリンを管楽器奏者に演奏させる、ビブラフォンを省略する、グロッケンシュピール奏者が507小節目をトレモロではなく単音で演奏しつつ508小節目を省略してトライアングルをあらかじめ吊るしておいて鳴らす、など何らかの工夫をする必要があります。
吹奏楽コンクール自由曲におすすめの抜粋版は?
全曲で約10分強ありますので、課題曲に4分程度の曲を選択すると、3分程度はカットする必要があります。
バッカナール、プチ・アダージョ、フィナーレ(約6分13秒)
最も定番の組み合わせと言えます。冬、春、夏をカットし、変奏もカットしたものです。
時間に余裕ができるので、バッカナールを爆速にする必要もなく、プチ・アダージョや、フィナーレのアポテオーズをゆったりと演奏できます。
那覇市民吹奏楽団 様(令和6年、九州大会出場、銀賞を受賞)はこの組み合わせでした。

バッカナール、夏<矢車菊とケシ>、プチ・アダージョ、フィナーレ(約7分21秒)
定番に、プチ・アダージョの導入にもなる「夏」を加え、優雅な方向で変化を出したものです。
課題曲が4分程度であれば時間内に収められます。
バッカナールから夏へは、春の最後を活用するとスムーズにつながります(94小節目の後、235小節目へ飛ぶ。)。
バッカナール、プチ・アダージョ、変奏(サテュロス)、フィナーレ(約7分11秒)
定番に、秋の嵐を思わせる「変奏(サテュロス)」を加え、荒々しい方向で変化と新味を出したものです。
課題曲が4分程度であれば時間内に収められます。
修正履歴
2025(R7).1.2版(v2)
- 楽譜ソフトをFinaleからDoricoに移行し、Doricoでデータを読み込んで修正した。
- ハープの代わりにピアノを編成に加えた。
- 木管楽器に書いていたハープ代理演奏用の小さな音符を削除し、その分をより有効活用する形で再編した。
- 306〜308小節目、コントラバスを加えた。
2020(R2).7.14版(v1)
- 初版。那覇市民吹奏楽団のコロナ禍における練習曲として編曲し、提供した。
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